text : PAPUWA

[ トシ→リキ→シン小劇場 ]


 不思議な不思議な南国の島、パプワ島。その島のどこかに存在するただっ広い草原に、黒髪長髪の男が2人、相対していました。
「降参するなら今のうちだぜ、ガンマ団総帥さんよォ」
 切れ長の目をいつもより鋭くして睨んでくるのは、心戦組副長土方トシゾーさん。
「ハッ! だーれが降参するってェ? そのセリフ、そっくりそのままテメーに返すぜ」
 対するガンマ団総帥ことシンタローさんの貌には、余裕の笑みが浮かんでいます。
「シンタローさん!トシさん! やめてください! 隣に暮らす者同士、仲良くやればいいじゃないっすか!」
 距離をとって向かい合う2人の間で、家政夫リキッドは力いっぱい叫びます。が、吹きすさぶ風にその声は攫われ、リキッドが期待していたような効果を齎しませんでした。
「そのセリフはそこの侍だけに言え。俺はただ売られた喧嘩買っただけだ」
「口出しは無用だ、リキッド。そこで黙って見てろ」
 冷たく言い放つシンタローさんとトシさん。それでもリキッドは引き下がりません。
「そんな……っ! やめてください……っ、俺の……俺のために争うなんてやめてください!!」
「違わぁ! 誰がテメェのためだ!!」
「違わねェ! いいかげん目ェ覚ませリキッド! こいつは所詮ブラコン総帥なだけだ!」
「ぁア!? 御託はいい! さっさとこの島でのコタローのスナップ写真よこしやがれ! 俺が用があるのはそれだけだ! そこのヤンキーなんざ、どーでもいいんだよ!!」
「そら見ろ! 純粋にリキッドを賭けた勝負をもちかけても応じやしねぇ! モノでしか釣られない汚ェヤローだ!」
「ンだとォ?! こんなファンシー家政夫に振り回されてばっかのホモ侍にゃ言われたかねぇなァ!」
「〜〜〜〜ブッタ斬る!!」
「上等だ!!」
 間髪いれずに言い合うシンタローさんとトシさん。あくまで余裕な態度のシンタローさんに、トシさんの平静さは失われていくばかり。
 ガンマ団新総帥の噂を知らないわけではないトシさん、ブラコン総帥だということは知っていましたが、彼を慕う者たちが多いことも知っていました。しかし、口を開けば罵詈雑言ばかりとは。世の男共が騙されているのはこの際どうでもいいのですが、自分が男気を見出したあの男・リキッドまでもがブラコン総帥を慕うのは我慢ならなかったのです。
「(俺の戦う姿を見て、以前のオマエに戻ってくれ! リキッド!!)」
 そんな意味合いも込めてちらりとリキッドの方に目をやります。
 が。
「戦うシンタローさん……いつにも増してカッコいいよなァ――
ノォォォォォ!!
 頬を赤らめ、潤んだ瞳でシンタローさんだけを見つめるリキッド。
 狼国壬生製サムライの、島中にこだまする悔し泣きの叫びからその決闘の幕は開けたとか開けなかったとか。
 勝負の行方は皆さんのご想像にお任せします。



可哀想じゃないトシさんなんてトシさんじゃないやぃ! …と雪咲は考えているようです(笑)