text : SUMMON NIGHT

[ ただいま −トウハヤ的エンディング− ]


おれは、薄情な人間だと思う。
だって、あんなに悲しい別れをしたというのに。
心のどこかで期待していたんだ。
君が、そこに居てくれるということを。

だって、声が聞こえたんだ。

 ――君は……君は今、どうしている?
   いつものようにちゃんと笑っているのだろうか?

懐かしい声だった。
懐かしいと思えるほど、向こうの世界に居たわけでもないのに。
それでもそう思ったのは、それほど君のことを想っているということなのかもしれない。

白い光。
物語の終わりを告げる白い光。
おれを、世界から排除する。

視界は、おれの目の前に存在するものは、全て色を失っていた。
それが徐々にその色を取り戻し始めた時、おれは元の世界に戻ってきたことを自覚した。
時と共に世界に色が戻っていく。
それは一瞬の出来事だったのだろう、けれど、その時のおれには永い時間のような気がしていた。

見たいようで、見たくない。
君が居てくれることを望み、君の居ない世界への帰還を拒否していた。

あれは幻聴だったのか?
おれが、期待するあまり聴いた声だったのか?
心が望んだから、聞こえた声だったのだろうか。

フィルターのかかった世界。
まるで水の中にいるように、はっきりとした形を持たない。
空の色、鮮やかな朱に染まっている。
見慣れた風景、小高い砂場の山、風に僅かに揺れるブランコ、遊び手をもたない滑り台。

そして――。

「籐矢――」

おれの前には、おれの望んだ彼がいた。
目を丸くした彼――それは決して見慣れたものではなかったけれど。

「ただいま」

おれの言葉に、彼は幾分か顔をくしゃりと崩す。
こんなことを言ったら怒られてしまうかもしれないけれど――籐矢は今にも泣きそうな顔をしていた。

でも。

「おかえり」

泣きそうだったのは、おれの方だった。
そこに彼がいてくれたから。
おれを迎えてくれたから。
あの声は彼のものだったのだと、そう思える証拠を手に入れたから。



友人へのプレゼントとして書いたお話。
ていうか、設定・セリフ等、ご本人のサイトからパク……げふげふ、いえ、何でもないです。コッチの話(笑)
贈り物として書いたんですが、微妙に、ていうか、思いっきりこれまでに書いた3作品と繋がってます。
本当にキールさん、立場なさすぎ(笑) パートナーEDのくせに(T▽T)
キールファンの皆さん、ごめんなさい(って、今更のような気もしますが)

この話の元となったマンガが読みたい人は…≫ O.I.B.M